2012年12月4日火曜日

火男(ヒオトコ→ヒョットコ)

幕末、維新の胎動が始まりかけた頃、画家 葛飾北斎の盟友であった当時の人気作家 柳亭種彦の凄惨な死体が1カ月の拷問の凄さを物語る形で戸板にのせられ奉行所から帰ってきた。幾多のムチ打ちや切り傷の上に塩をかけられた、種彦の変わりように北斎は絶句したと伝えられている。
 表現や言論の自由が極度に制限されていた幕末、一方では出島や蘭学を通して入ってくる外国からの情報を知って有識者達はさまざまな隠し術を使って自由な表現や活動へのエネルギーをみなぎらせていた。
 北斎の晩年の作、小布施の岩松院の天井に描かれた十字架等もその一つと云われている。
 こんな時代に夜、宴会の席や遊興の世界においてはヒョットコやオカグラを通して自由な表現が一部見逃され、大目に見られ、人々の捌け口となっていた。ヒョットコの面を被った芸人から語られる圧政に対するギャグともいわれる表現は日に日に際どいものになっていったらしい。
 ヒョットコの語源は火男(ヒオトコ)にある。火男とは、元来「火を消さないように火を吹いている男」の意味で時代や社会の状況に対して警句を発し行動するという意味である。
 北斎も種彦もこうした意味で火男である。北斎は晩年、西洋の油絵の魅力に出会い、八十歳からの約十年間、老人にとっては過酷とも思える、一カ月山越えの長旅をものともせず、小布施の豪商 高井鴻山の支援を得て幕府禁制の自由な表現に挑んだ。道中、幕府の密使に追われながらも、その行き先をごまかす為に日光詣でのふりをして出かけたとも云われる。火男の執念がそして晩年の傑作を生ましめた。人間は理屈で火がつくものではない。情念で火がつくものである。
 維新から約百五十年、時代の様相は異なるが、維新前夜と思えなくもないくらい、社会が疲弊している。維新の志士を始め、日本に今日の成長をもたらしてくれた火男達の肝心の火を消してはならない。ヒョットコの面をつけてでもイイ。

〈悪しき政治と闇の献金システムの本質〉
高速無料化とかけ離れた
   第2東名という利権と闇の献金システム
 民主党政権になって一旦は、高速無料化の夢を体験した私達だったが、それも束の間、今や高速道路は官僚による天下り先の確保、利権のバラまき、実質上の献金システムの舞台となってしまった感がある。
 年末、毎年のように繰り返される予算消化のための冒大な道路工事と同じく、増税までして巨費を費やす道路を作りつづける理由はどこにあるのだろうか。国土交通省の地方にある土木工事務所は、そのOBも含めて地域の公共工事の主導権を握り、巧妙な政治家と地域大企業との利権構造を作りあげている。行政組織の都市計画の場もこうした人事がはり巡らされいる。先頃開通した第2東名の沼津サービスエリアもこのことを象徴している。何故こんな豪華なデパートまがいの高店街が必要なのか分からない。間接的に建設費は国民が負担している。しかも消費された売上が地元に落ちる訳でもなく、千客万来にも拘わらず、食事の値段は割高だ。本来であればガソリン税・自動車税等の他に高い高速料金を払って利用しているのだからその利用量の多さから云っても割安であるべきだ。ちなみに沼津港であればせいぜい五百円のウニ丼が千二百円という始末だ。この法外な利益はどこに行っているのか。ベラボウだ。普段頻繁に利用する海老名SA等はラーメンが七百円もする。巷では四百円程度のものだ。
 更にひどいのはガソリンスタンドの経営と施設である。ある時ガソリンが失くなり高い料金の沼津SAのスタンドを使ったのっだが車の出入りの前後で縁石にタイヤをこすってしまった。見てみると普通の幅よりも車道が狭い上に高目の縁石がせり出して見えにくかった。スタンドの運営会社が大手だったので「どうしてこんな設計にしたのか」聴いたところ、「地元政治家の紹介で今までスタンドの建築をやったことのない建設業者に建築を強要され、他にも沢山の不具合がある」と嘆いていた。やがて補修が必要となることな必定だがその補修費を結果的に負担させられるのは、またまた利用者になるのである。

淋しい徳山製油所の閉鎖
唯一の民族資本による石油精製企業・出光石油の徳山製油所が年内で閉鎖されることになった。戦前から戦後に駆けて、人間尊重と互譲の精神で、気骨ある経営風土を創造し、戦後並み入る欧米の石油資本と相手に堂々と戦いを挑み、日本のエネルギー政策と事業に貢献した出光佐三翁の魂ともいうべき製油所であった。
 精油所の閉鎖は、全ての石油供給を外国の手に委ねることを意味し、民族資本による石油供給にこだわった佐三翁の魂の火が消えることになる。
 更にこの閉鎖の意味する、もう一つの不都合な真実がある。それは、脱原発が叫ばれる中、本来、火力発電所の増設やエネルギー政策の要として必要な石油供給は維持すべきなのに、官僚主導で、原発依存体制が強化されていることだ。
 若し、佐三翁が存命であれば、この嘆かわしい情況を見て何とおっしゃるだろうか。折から、佐三翁を主人公としたノンフィクション小説「海賊と呼ばれた男」がベストセラーとなっている。愛国心のある国民であれば、皆、想いは一つにちがいない。

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